低温焙煎には”ボトム温度”という考え方はありません

焙煎動画で「ボトム温度(中点)」という言葉をよく耳にしますが、低温焙煎には「ボトム温度」という考え方はありません。
なぜなら、低温焙煎では焙煎開始時の温度を132〜134度付近で安定させることが重要だからです。
低温焙煎では、この温度帯からスタートしなければ、生豆の繊維質を十分に解すことができません。
そして、この「繊維質を解す工程」こそが、1ハゼで完熟した浅煎りを実現するための土台になるのです。
なぜ繊維質を解す必要があるのか
1ハゼで完熟した浅煎りに仕上げるには、生豆内部の水分を1ハゼまでにしっかり抜く必要があります。
しかし、生豆は硬い繊維質に包まれているため、いきなり熱を加えただけでは内部の水分は簡単に抜けません。
そこで必要になるのが、焙煎初期の「繊維質を解す工程」です。
繊維質がほぐれることで、初めて生豆内部の水分の通り道ができ、効率よく水ヌキが進むようになりますが、そのメカニズムについては、解説が長くなりますので改めて別の章でお話したいと思います。
なぜ133度前後なのか?
スタート温度は季節によって意識的に微調整する必要があります。
・夏場は132度台
・冬場は134度台
この範囲に安定するよう、焙煎前に窯の加熱状態を調整します。
不思議なことに、この温度帯から外れると、生豆の繊維質がうまく解れてくれないのです。

正直なところ、
「なぜ133度前後なのか」
その理由を理論的に完全説明できるわけではありません。
しかし長年の経験から言えるのは、この工程で繊維質をうまく解せるかどうかが、その後の焙煎結果を大きく左右するということです。
※温度は焙煎機の構造によって多少異なります。あくまで参考値としてお考えください。
「保有熱」という考え方
さらに重要になるのが「保有熱」の調整です。
例えばフライパンで炒め物をするとき、
・フライパンが十分温まっていない
・逆に熱くなりすぎている
どちらも上手く調理できません。
これは、フライパンが持っている熱量が、炒め物をうまくするのに適切な温もりではないからです。
焙煎機も同じです。
焙煎機がどれだけ熱を蓄えているかによって、生豆への熱の伝わり方は大きく変わります。
これが「保有熱」という考え方です。
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季節によって条件は大きく変わる
お湯を沸かす時間が夏と冬で違うように、焙煎も季節の影響を大きく受けます。
例えば当店では、生豆を室温保管していますが、
・冬場は約16℃
・夏場は約27℃
と、10度以上の差があります。
さらに、
・外気温
・室温
・生豆温度
・焙煎機の蓄熱量
これらすべてが季節によって変化します。
当然、そのまま焙煎すると結果も変わってしまいます。

保有熱の調整とは何か
「生豆の繊維質を解す」と一言で言っても、
実際には、
・焙煎機が持つ熱
・生豆が持つ温度
・周囲の環境温度
これらを総合的に考えながら調整していく必要があります。
自然条件は季節ごとに変化します。
だからこそ、焙煎方法の軸は変えずに、環境によるブレだけを補正する作業が必要になってくるのです。

低温焙煎を理解するための2つの鍵
低温焙煎を理解するうえで重要なのは、
✅ 「保有熱」という考え方
✅ 「132〜134度での安定スタート」
この2つです。
この土台があるからこそ、生豆の繊維質がうまく解れ、効率よく水ヌキが進み、1ハゼ完熟の浅煎りへとつながっていくのです。
ここまでで「保有熱」という概念を少しイメージしていただけたでしょうか。
次回の解説では、具体的にどのように「保有熱の調整」を行っているのかを、実際の焙煎動画とともにご紹介します。
引き続き「低温焙煎」にご興味を持っていただければ嬉しいです。
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赤みのある、透き通った「琥珀色」の一杯です。