低温焙煎を解説するno,40

そのままでは火の通りが悪く、表面と芯に温度差が生じて「焼きムラ」や「生焼け」につながります。

これを行うことで、生豆全体に熱が伝わりやすくなり、後の焙煎がスムーズになります。

浅煎り(1ハゼで完熟させる焙煎)は、豆の芯まで火を通さなければ成立しません。
そのためには、焙煎の初めに「繊維質をほぐす」ことが不可欠です。

「解す」とは、繊維質を柔らかくほぐし、熱と水分の通りを良くすることを指します。
ただ色が付くだけではなく、豆の内部構造を変化させる大切な工程なのです。

料理に例える「中まで火が通る」大切さ

焙煎の現場でよくある勘違いは、「豆の色が変われば煎れている」 という思い込みです。

これは料理で例えると、煮物や焼き物の 「表面だけが煮えていて中が生焼け」 の状態と同じです。

芯まで火が通っていない豆は、味わいが浅く、雑味が強く出やすくなります。
せっかくのコーヒー豆のポテンシャルも活かせず、未熟な風味に仕上がってしまうのです。

「低温焙煎」と聞くと、低い温度で長時間じっくり煎るイメージを持たれる方が多いのですが、実はそれは誤解です。
この焙煎法の本質は、単に時間をかけることではなく、「焙煎初期に行う繊維質を解すプロセス」 にあります

生豆内部には多くの水分が含まれています。
初めにこの水分をしっかり抜きながら繊維質を解すことで、豆は芯まで均一に火が通る状態になります。
結果として、焙煎全体に必要な熱量はむしろ少なく済み、軽やかで雑味のないコーヒーに仕上がるのです。

「繊維質を解す」と聞くと簡単そうですが、実際は焙煎において最も理解されにくいポイントです。
それは、この工程が 「保有熱の調整」 と深く関わっているからです。

焙煎機が持つ熱をどう管理するかによって、生豆の繊維質が解れるかどうかが決まります。
ここが低温焙煎の肝であり、最大の難所ともいえる部分です。
保有熱の扱い方については、別の回で詳しく解説します

繊維質を解すことで、熱は効率よく豆全体に伝わり、芯までしっかり火が通ります。
その結果、最小限の熱量で焙煎が可能となり、雑味のないクリアな味わい が引き出せます。

今回ご紹介した「繊維質を解す」工程は、低温焙煎を理解する上で最も重要なテーマのひとつです。
次回は、このプロセスと切り離せない 「保有熱」 について詳しく解説していきます。