生豆の繊維質が無理なく解れる”温度帯と火力”を見つけることが最重要

低温焙煎を一言で表現するなら、
『熱の布団で生豆を優しく包むようにして煎る焙煎方法』という表現が最も近いと思います。
そして、私が繰り返しお話ししている「保有熱の調整」とは、
「その熱の布団(窯の蓄熱量)を、熱すぎず、冷たすぎず、生豆が最も心地よく熱を受け取れる状態に整える作業」のことです。
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『熱の布団』が焙煎の結果を決める
特に季節の変わり目は注意が必要です。
外気温が変わると、窯の冷め方も変わります。
すると同じ火力で焙煎していても、生豆が受け取る熱量は大きく変わってしまいます。
だからこそ、
- 火力が強すぎてもダメ
- 火力が弱すぎてもダメ
- 保有熱が多すぎてもダメ
- 保有熱が少なすぎてもダメ
なのです。
重要なのは、
「熱の布団が心地よい温もりであること」です。
その適切な温もりの中で、生豆の繊維質はゆっくりと解れ、水分は無理なく外へ抜けていきます。
逆に、窯の状態が適切でなければ、表面だけ色づいても芯まで熱は届きません。
見た目は焼けていても、中は未熟なまま。
これでは本当の意味で美味しいコーヒーにはならないのです。
低温焙煎は、単に低い温度で長時間煎る方法ではありません。
生豆を熱の布団で包み込みながら、芯まで丁寧に熱を届ける焙煎技術なのです。

生豆の繊維質は火力だけでは解れない
「繊維質をほぐすには、弱火でゆっくり煎ればいい」
そう思われる方も多いかもしれません。
しかし実際は、それほど単純ではありません。
重要なのは火力よりも、
焙煎機がどれだけ適切な熱を蓄えているか
なのです。
窯の状態、つまり「熱の布団」が整って初めて、生豆の繊維質は無理なく自然に解れていきます。
特に重要なのが、焙煎開始から約8分30秒までの工程です。
この時間帯に繊維質をどれだけ上手く解せるかで、その後の焙煎結果は大きく変わります。
言い換えれば、
焙煎の成否は最初の8分30秒でほぼ決まる
と言っても過言ではありません。
私たちが目指したのは、
赤みのある、透き通った「琥珀色」の一杯です。

まずは窯の状態を整える
保有熱の具体的な整え方については別の機会に詳しくお話しします。
ここでは、実際の温度設定をご紹介します。
保有熱の調整が終わったら、
まず窯の温度を160℃まで上げます。
そして火を止め、生豆を投入します。
その後、
窯の温度が155℃まで下がったところで再点火します。
なぜ160℃投入、155℃点火なのか
よく、
「なぜ160℃で投入するのですか?」
という質問をいただきます。
正直に言えば、これは理論よりも経験から導き出した数値です。
長年試行錯誤を繰り返した結果、私の焙煎機ではこの温度帯が最も良い結果になりました。
160℃より低いと、
どこか熱量不足のような、物足りない味になります。
反対に160℃より高いと、
表面だけが先に煎られ、苦味が強く硬い味になりやすくなります。
おそらく、生豆の繊維質が最も自然に解れる「適正な蓄熱量」が存在するのでしょう。

温度の数字より大切なこと
もちろん、
「160℃が絶対に正しい」
という意味ではありません。
温度計の位置も違えば、焙煎機の構造も違います。
同じ160℃表示でも、実際の熱の伝わり方は機械によって異なります。
大切なのは、
その焙煎機で、生豆の繊維質が最も自然に解れる温度帯を見つけること。
ここで紹介している数値は、あくまで参考値としてお考えください。
低温焙煎には「ボトム温度」の考え方がない
ここからが低温焙煎の大きな特徴です。
一般的な焙煎では、「ボトム温度」まで温度を下げる考え方があります。
しかし、私の低温焙煎では違います。
焙煎スタート時の温度は、
- 夏場は132℃台
- 冬場は134℃台
で安定するように火力を調整します。
この温度帯が、生豆の繊維質が最も自然に解れてくれるポイントなのです。
これより低ければ熱量不足。
これより高ければ熱量過多。
その結果、味にも大きな違いが現れます。
ただし、この温度も私の焙煎機でのデータです。
焙煎機の構造や設置環境によって適正値は変わります。
最終的には、それぞれの焙煎機で試行錯誤しながら探し出すしかありません。
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1ハゼまでに水分をほぼ完全に抜く
設定温度で安定したら、火力をガス圧90まで落とし、本格的な焙煎が始まります。
その後、私の低温焙煎では、生豆の種類によって多少の違いはありますが、
約19分かけて1ハゼを迎えます。
その間、生豆の繊維質をゆっくり解しながら、内部の水分を外へ逃がしていきます。
そして1ハゼを迎える頃には、
生豆内部の水分はほぼ抜け切った状態
になっています。
だからこそ、
1ハゼで完熟した浅煎り
が可能になるのです。

しかし、本当の秘密はその先にある
実は、1ハゼで完熟浅煎りになる理由は、水分が抜けているからだけではありません。
1ハゼに至るまでの温度変化。
熱の伝え方。
生豆内部で起きている変化。
そこにも大きな秘密があります。
その部分については、次の章でさらに詳しく解説していきたいと思います。
低温焙煎の本質は、まだまだ奥が深いのです。
44年の焙煎経験から生まれた
フクモト珈琲の低温焙煎。
苦味を抑え、
香りと甘みを引き出したコーヒーです。
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