低温焙煎では、1ハゼの前に生豆が2度膨張・収縮を繰り返えし水ヌキを完了します

これまでの解説でも何度かお話ししてきましたが、
低温焙煎が「1ハゼで完熟した浅煎り」を実現できる最大の理由は
1ハゼまでに生豆内部の水分をほぼ完全に抜き切る「水ヌキ工程」にあります。
この水ヌキの様子を注意深く観察していると、ひとつの特徴的な現象が見えてきます。
それは、
生豆は「膨張」と「収縮」を2度繰り返し、3度目の膨張で1ハゼを迎える
ということです。

この2回の膨張と収縮を繰り返す過程で、生豆内部の水分は少しずつ外へ逃げていきます。
そして、内部の水分がほぼ抜け切ったタイミングで迎えるのが、3度目の膨張──つまり1ハゼなのです。
私は、この焙煎の進み方こそが、低温焙煎最大の特徴だと考えています。
低温焙煎のコーヒーを味わってみる

焙煎でよくある誤解があります。
「豆がきれいに色づけば、芯まで火が通り、水分も自然に抜けている」
そう思われる方は少なくありません。
しかし実際には違います。
生豆は硬い繊維質の塊です。
繊維質が十分にほぐれていない状態では、外からいくら熱を加えても、その熱は豆の中心まで簡単には届きません。
その結果、内部には水分が残り、芯は半生のままになってしまうのです。
1ハゼを迎えても完熟した味にならない豆があります。
その原因は、生豆内部にまだ多くの水分が残っているからです。
1ハゼによってようやく内部の水分は外へ抜け始めますが、それでも十分に抜け切らなければ、青っぽさや未熟さが残ります。
そのため、多くの場合はさらに焙煎を進めざるを得なくなるのです。
雑味のないコーヒーを一度試してみる

ここで、お餅を焼く様子を思い浮かべてみてください。
硬いお餅は、熱が加わることで少しずつ柔らかくなります。
同時に内部の水分が温められ、水蒸気となって膨張を始めます。
やがて風船のように大きく膨らみ、圧力が抜けると再びしぼんで収縮します。
低温焙煎で起きている現象も、これによく似ています。
生豆は熱によって少しずつ繊維質がほぐれ、内部の水分が膨張と収縮を繰り返しながら外へ抜けていきます。
そして、
膨張 → 収縮 → 膨張 → 収縮
という2つのサイクルを経て、内部の水分がほぼ抜け切ると、
3度目の膨張で1ハゼを迎える。
これが、私が長年の焙煎で確認してきた低温焙煎ならではの焙煎プロセスです。
いかがでしたでしょうか。
低温焙煎における「水ヌキ」の仕組みを、少しイメージしていただけたでしょうか。
生豆が焙煎の進行とともに、どのように膨張・収縮を繰り返しているのかを、実際の焙煎動画でご覧いただければ、さらに理解が深まって頂けるかと思います。
美味しいコーヒーは、黒いだけではありません。
私たちが目指したのは、
赤みのある、透き通った「琥珀色」の一杯です。